愛しのカレはV(ヴィジュアル)系
「ヅラちゃん、大丈夫?」

「は、はい…」

咳込みながら、何とか答えた。



「慌てて食べるからだ。」

リクさんはにやにや笑ってる。
全くもうっ!
詰まったのは、リクさんのせいなのに…



「残念ながら今は持ってません。
あんた、なにか持ってる?」

私は咳と共に流れた涙を拭きながら、首を振った。



「なに?リク…ぬいぐるみやマスコットがほしいん?」

「そ、そういうわけじゃない。
ど、どんなのかなって…ちょっと思っただけだ。」

だよね?
ヴィジュアル系の人がそんなの好きなはずないよね…



「リクさん達はどうやって集まったんですか?」

「俺たちはメン募。」



(めんぼ?)



「楽器屋のメンバー募集の張り紙が最初やったな。」

キースさんの言葉に、リクさんが頷く。



(あ、メンバー募集だから、縮めて『メン募」なんだね。)



「リクと朔也が、ギターとドラムを募集してたんや。
あの頃、僕は大阪から出て来たばっかしでな。
初めてリクに会うた時は、えらいとんがってる子やなてビビったわ。」

「よく言うよ。」

「キースさんは最初からこんな感じだったんですか?」

「そう。
最初からやけに馴れ馴れしかったし、なんか苦手なタイプだなぁって思ったよ。」

「ひどいやないか~!」

「だって本当だもん。
でも…ギターは上手かったから、ま、個人的な付き合いをしなきゃ良いかって思って…」

「ちょっと今のん聞いた?
酷いと思わへん?僕、普段からけっこうこんな風にリクに虐げられてんねんで。
可哀想やろ?」

キースさんが大袈裟に顔を歪ませてそう言うから、私は思わず笑ってしまった。


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