愛しのカレはV(ヴィジュアル)系
背中に回されたリクさんの手のドキドキしながら、私は懸命に平静を装った。
なんでこんなにドキドキするんだろう…?
さっきのオルガさんの時はこんなにドキドキしなかったのに…



「いきま~す!」

さゆみの掛け声に、私は無理矢理笑顔を作った。



「あ、ありがとうございました。」

「ヅラはしっかりピンで止めときなよ。」



そう言って、リクさんは私の肩を叩いて笑った。
本当にデリカシーのない人…
私が気にしてるの、わかってるくせに…
あぁ、なんだか泣きたくなって来た。



私は席に戻り、カシスソーダをぐいと飲みほした。



「璃愛、可愛く撮れたよ。」

さゆみが、私とリクさんの2ショットを見せてくれた。
そんなもの、見たくもない!…と、思いつつ、ちらっと見たら…



(あれ……)



なんでだろ?
無理矢理笑ったはずだったのに、確かに私にしては可愛く撮れてる。
しかも、リクさん…なんて優しい笑顔を浮かべてるんだろう…
あんな、意地悪なことを言う人なのに…子供みたいに明るくて自然な笑顔だ…



苦手なはずなのに…なんだかその笑顔に胸がきゅんとして、私は自分の気持ちが理解出来なかった。

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