愛しのカレはV(ヴィジュアル)系
「答えて下さい!」

女の子はかなり怒ってる様子で、追い詰めるように言葉を続けた。



「それはやな…」

「私達、今度からCLOWNの衣装を作らせてもらってます。」

「え?」

女の子達はびっくりしたような顔をしてたけど、それは他の三人も同じだと思う。
だけど、驚いたことに、さゆみが私の後に話し始めて…



「私、リクの大ファンで、こないだ、リクに衣装を作ってプレゼントしたらすごく気に入ってもらって…それで、みんなの衣装を作ってくれないかって言われて…
私一人で四人分は大変なんで、この子にも頼むことにして…今日はその打ち合わせです。」

「実はそういうことやねん。
今まで作ってくれてた人が、事情があって出来へんようになってな。
困ってたところやったから、ほんま助かったんよ。」

さゆみもキースさんも役者だね。
女の子達はそれを聞いて、すっかり信じたようで、とても気まずい顔をして…



「す、すみません。失礼なこと言ってしまって…」

「謝るんやったら、僕らやのうて、彼女らに謝って。
僕らお金ないから、無報酬で作ってくれはんねんで。」

「ご、ごめんなさい。」

「いえ…彼女さんに見られたなんて、なんだか嬉しいです。」

さゆみは、そう言って余裕の笑みを浮かべた。



「あ、あの…握手してもらって良いですか?」

「あ、私、ここにサインしてください。」

背の低い女の子が、着ているTシャツを引っ張る。



「みんな見てるから…」

「サインくらいええやん、したり。
……って、ペンあるか?」

「あ…」

「私、持ってますよ!」

さゆみがバッグから取り出したペンで、リクさんは女の子のTシャツにサインをして、女の子達は代わる代わる二人と握手をして、満足そうな顔で席に戻って行った。


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