愛しのカレはV(ヴィジュアル)系
「リク…さん!?」

「おいおい…わかんなかったのかよ。」

「ご、ごめんなさい!」

だって…リクさんがサングラスかけてるのを見たのは初めてだし、リクさんらしからぬ格好だし、髪だって…



(あ……)



よく見ると、長い髪は束ねてキャップの中に隠してあった。



でも、どうして?
なんで、こんな変装みたいなことを…?



「本当におまえは天然だな…」

リクさんはサングラスを戻すと、再び、私の手を取った。



「じゃ、行くぞ!」

「は、はい。」



私達はそこからバスに乗りこんだ。
早い時間のせいか、乗客はまばらだ。



「リクさん、今日はどこへ…?」

「ハイキング…抜けがけハイキング同好会だな。」

「言ってくれたらお弁当作ってきたのに…」

「朝早いから大変だろ?」

リクさん、私のこと、気遣ってくれたんだ…そう思うと、なんだか胸が熱くなる。



「そのくらい平気ですよ。」

「そうか…だったら、この次は頼むな。
今日はとりあえずコンビニで買ってきたから。」

バスはどんどん山の方に近付いていく。
山の緑が目に優しい。



「朝の山は一段と気持ちが良いな。」

確かにリクさんの言う通りだ。
だから、わざわざこんな早くに呼び出したのかな?



早い時間だから、すれ違う人もいつもより少ない。
山を登る間も、ずっとリクさんと手を繋いだまま…
なんか、幸せだな。



いつもと同じ…景色を眺めて、お弁当食べて、他愛ない会話を交わして…
だけど、そのいつもと同じ行動も、二人と四人ではやっぱりなんか違うね。
二人っきりだと、やっぱりちょっとドキドキするよ…



「あぁ、なんかすっきりしたな。
エネルギーが体内にチャージされたような気がするよ。」

「そうですね。」

リクさんは、山に来ると本当にリラックスした顔になる。
ただ、ひとつわからないのは、なんでこんな変装をしてるかってこと…
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