愛しのカレはV(ヴィジュアル)系
考えられるとしたら…



(もしかして…リクさん、ファンの目を気にしてる?)



今までは変装なんてしなかった。
水族館で私が心配した時も、そんなこと、まったく気にしてなかったのにどうして?



それから、リクさんと何度か会ったけど、会うのは決まって早朝…そして、行くのは人の少ない所…
リクさんは変装…



間違いない。
見られたくないんだ…私とデートしてるところを…
その気持ちはわかるような気がするけど、今までは気にしないって言ってたのに、急に変わったのはなぜなんだろう?



あのライブの日を境にして、リクさんは変わった。
変わったとはいえ、冷たくなったわけじゃない。
私に対しては前よりも優しいくらいだから、私が大きな声を上げたことを怒ってるってわけではなさそう。



じゃあ、なぜ?
その答えは、どんなに考えても私にはわからなかった。



会えば会うほど、リクさんのことが好きになっていく。
瑠威との約束を破ってしまうのは心が痛いけど…
いつの間にか私はすっかりリクさんの虜になっていた。
ママが言ってた『好きな気持ちは止められない』っていう言葉の意味が、やっとわかった気がするよ。
考えてみれば、リクさんは私の初恋…
こんな年になって初めて好きになった人…
初恋は結ばれないなんて言うけど、そんなの迷信だよね。
だって、私達は会う度にどんどんいい感じになっていて…



「そういえば、まだ返事はくれないの?」

「え?へ、返事?」

「そう…俺と付き合うかどうかっていう…」

なんて答えよう…
私の気持ちはもう決まってる。
でも、なんだか今更恥ずかしいな。
どう言おう…?



(あ…そうだ…)



「……もう付き合ってるじゃないですか。」

私にしては似合わない言葉…
ちょっと無理して格好付けちゃった。



「えっ!?」

リクさんは目を丸くして私をじっとみつめて…そして、照れくさそうに微笑んだ。



「……だよな。」

リクさんはそう言って、何度も頷く。



「好きだよ…望結…」

「リクさん…私も…」

リクさんはそっと私を抱き寄せて…
私の頬に優しいキスを落とした。



ちょっとびっくりはしたけれど、とっても嬉しかった。
愛されてる実感みたいなものを感じて、涙が出そうになった。
私…本当にリクさんの彼女さんになったんだ。
こんなだめな私なのに、リクさんは私を選んでくれたんだ…
幸せがいっぱい過ぎて胸が破裂しそう…



だけど、その一方で得体の知れない不安も実はどんどん大きくなっていて…
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