愛しのカレはV(ヴィジュアル)系
「望結~!めしだぞ~!」



階段の下で、瑠威が叫ぶ。
行かなきゃ…行かないと変に思われる。
私は涙を拭いて降りていった。



「まぁ…望結…どうしたの?」

涙を拭いたくらいじゃ、この顔はどうにもならない。
何とか誤魔化さなきゃ…



「う、うん。
さゆみの知り合いの人のお父さんが、病気で亡くなったんだって。
入院中の話を聞いてたら、なんか涙が止まらなくなって…」

「あらあら…それはお気の毒ね。
ここはママがやっとくから、顔、洗って来なさい。」

「はい。」

下手な作り話で、なんとか誤魔化せた。
私…最近、嘘ばかり吐いてるね…
でも、言えないもん。
本当のことなんて。

瑠威が言ったことは本当だった。
バンドやってる人は、女の子のことなんて真面目には考えてないんだ。
浮気なんかへっちゃらなんだね。
私は、きっと今までにいなかったタイプだったから、リクさんにとってはもの珍しかったんだろうね。
ただそれだけのこと。

洗面所の鏡に映る私は酷い顔をしてた。
洗っても洗っても、なかなか涙が止まらない。



心が痛いよ…
胸が張り裂けそうだよ…



(失恋って、こんなに辛く苦しいことだったんだね…)


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