愛しのカレはＶ(ヴィジュアル)系

「じゃあ、話を聞かせてもらおうか。」

クロウさんはテーブルに置いてあった箱から葉巻を取り出し、煙をくゆらせる。



「望結が…今日は部活だから早くに出るって言ってだな。
最近、望結は早朝に出ていくことが頻繁にあったし、何かおかしいって感じてたんだ。
さゆみちゃんに会った時、部活の話をしたらなーんか変な態度だったしな。
それで、俺は今日こっそりと望結の後をつけた。
望結はやっぱり大学とは違う方向の電車に乗って…
それで…」

「リクと会ってたってわけなんだな？」

「あぁ…」

瑠威は不機嫌に答えた。



「そういうことだったか。
実はな、先日、リクから相談を受けたばかりなんだ。」

「クロウさん！」

「リク…話さなきゃ、わからないだろ？」

そう言われてリクさんは俯いた。



「相談って何だったんだ？」

「好きな子がいるんだけど、付き合ってることがわかったら、その子がファンの子にいじめられるかもしれない。
だから、その子と会う時は変装して、しかも、早朝から人の少ない場所で会ってるけど、そんなことをしてるのがその子にも申し訳ないし辛いって。
でも、まさか、それが望結ちゃんのことだとは夢にも思わなかったけど…」

クロウさんはそう言って、ふふっと笑った。



「俺は本気で望結を愛してます。
だから、本当は隠すつもりなんてなかった。
何も悪いことはしてないんだから…
だけど、ファンの子は望結をちょっとしたことでいじめた…俺と付き合ってるなんてわかったら、もっと酷いことをするかもしれない。
それでずっと悩んでて…クロウさんに相談したんです。」



なんて噓吐きなんだろう？
本当は、奥さんの手前そうやってるだけなのに、クロウさんにそんな相談をするなんて、まったくどういう神経してるんだろ…！？
もう我慢の限界だ！