愛しのカレはV(ヴィジュアル)系



「なんだ、そうだったんだ…」

「ごめんねぇ…心配かけて。」



次の日、一緒にランチを食べながら、さゆみに昨夜の話を聞いた。
昨夜、さゆみからの返信がなかったのは、スマホの電池が切れてたかららしい。
用心深いさゆみは、いつもポータブルの充電器を持ち歩いているけれど、昨日は時間が長かったせいか、それすらも使い果たしてしまったらしい。



「でも、出待ちの前に切れなくて良かったよ。
切れてたら、画像も撮れないところだったもん。」

さゆみはそう言って笑った。



結局、ファンの参加出来る打ち上げなんてなくて、さゆみ達は家に帰る前にファミレスに寄ってただけだったらしい。



「なんかね、昨夜はみんな本当に機嫌が良かったんだ。」

「そうなんだ…」

それは私にもわかってた。
だって、どの画像もみんなすごく良い顔してたもの。



「あんたも出待ち出来たら良かったのにね。」

「う、うん…でも、瑠威がいるとやっぱり…ね。」

「そりゃそうだよね…あ、それで、瑠威は昨夜何時ごろ帰って来たの?」

「それが、寝てたからよくわからないんだけど、だいぶ遅かったみたい。
瑠威もママもいつもより起きて来るのが遅くて、すごく眠そうな顔してたから。」

「きっとそうだろうね。多分、昨夜はいろんなバンドが合同で打ち上げやったんじゃないかな?」

「そうかもしれないね。それにしても、シュバルツのメンバーはとにかくみんなよく飲むよね。
でも、瑠威は家ではほとんど飲まないんだよ。」

朝食の時、昨夜の打ち上げの話が聞けないかなぁってちょっと期待はしてたんだけど、二人ともなんだかぼーっとしてて、あんまり話さなかったんだよね。
それに今まではそんな話、こっちから聞いたこともないのに、「ねぇねぇ、昨夜の打ち上げは誰とやったの?」なんて、聞き辛いし。
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