人間嫌いの小説家の嘘と本当

「おやおや。今日は、いつもにも増してご機嫌ナナメだね」



言葉に反して少し楽しそうにするマスター。
そして侑李が何も言わなくても、ギムレットを用意し始めた。



「ホント、すみません」



私は侑李の右隣に座る。
彼の右隣は、この店での私の定位置。

身長差があるから、あまり意味がないかもしれないけど、少しでも入って来る人から見えにくいようと、私なりに考えた末の結果だ。



「スズちゃんは、今日はどうする?」



“すず”は二回目に来た時にマスターが呼び始めた、私の愛称。

まぁ、涼花からそのまま親しみを込めて呼んだだけだろうけど、侑李も櫻井さんも私の事は苗字で呼ぶから、なんだか新鮮で嬉しい。



「じゃ……ミモザにしようかな」



ミモザは、シャンパンベースのオレンジのカクテル。
度数も少なくて、サッパリとして飲みやすい。

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