人間嫌いの小説家の嘘と本当
「……お子様」
「煩いわね。私が酔っぱらったら、あなたを守れないでしょ」
ベーっと舌を出して抗議する。
大体、侑李が異常なのよ。そんなに強いお酒飲んでも表情も態度も全然変わらない。
ザルでは無いらしいけど、彼がお酒に飲まれたところは一度だって見たことが無い。
「酔った方が強いと思うけどな」
無表情で、視線だけをチラリと私に投げかけギムレットを口に運ぶ。
失礼ね。でも酔えば力加減できないから、余計にそう思えるのかもしれない。
だけど男の侑李から、強いとか言われたくないような――複雑な気分。
「ふっ、相変わらず仲がいいね」
マスターの言葉に、一瞬お互い目を合わせカウンターに向き直る。
――仲良くなんて……
「無いな」
「無い!!」
侑李は淡々と、私は鼻息荒く同じ言葉を返す。
それを聞いたマスターは、一瞬驚いたように目を見開いたけれど、次の瞬間にはクスクスと嬉しそうに笑った。