人間嫌いの小説家の嘘と本当

静かな夜。今日は新月のせいか星が綺麗に見える。

街からタクシーを使って近くの駅前で降りた私たちは、酔いを醒ましながらゆっくり歩いていた。
もうすぐ侑李の家だ。これなら、今日は何事もなく帰れそう。



「ねぇ、侑李。星が綺麗だよ」

「……」



彼の袖を引っ張って主張するものの、何の反応も無い侑李。

Barに行くときのような、ピリピリとした苛立ちは感じないけれど無言のまま歩き続けている。



「侑李ってば」

「静かにしろ」



声のトーンで、体が強張る。
こんな声を出す時は、必ずと言っていいほど敵が周りにいるからだ。



「敵?」

「……どうだろうな」



侑李の家まで後二百メートルといった場所で足を止め、ある一点に視線が注がれた。

街灯から離れた闇に包まれた場所。
ここからは人がいるかどうかは見えないけど、確実に“何か”がいる。

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