人間嫌いの小説家の嘘と本当
知らず知らずのうちに、私は胸の当たりをギュッと掴んでいた。
「あぁ……なるほどな」
溜め息混じりに聞こえた小さな声。
それは紛れもなく、私の後ろにいる侑李からだ。
そう言えば、出会ったあの日も花束とメッセージカードだけで、私が結婚目前で男に振られたと鋭く言い当てたっけ。
情報処理の速さと頭の回転。そして推測。
きっと侑李の場合、それらが秀でているのだろう。
さすが小説家と言ったところだ。
今も二言三言のやり取りで、真幸が私の元カレだと気付いたはずだ。
どうしよう……これ以上、知られたくない。
「侑李、行こう」
侑李腕を引っ張って、一歩踏み出す。
「待って、涼花」
「話すことなんて、何も無い」