人間嫌いの小説家の嘘と本当
私を呼び止める真幸の声に、極力感情を乗せないように振り返ることなく言い放つ。
「俺には、やっぱり涼花だけなんだ。別れてハッキリ分かった……俺とやり直そう」
やり直す?今更、何をやり直すって言うんだろう。
私になんて言ったか覚えていないの?
あの言葉に、どれだけ傷ついたか――。
どれだけ涙を流したのか、この男は知らない。
いや。きっと知ろうともしないだろう。
「冗談言わないでよ。子供は?彼女はどうするのよ?」
だいたい妊娠している彼女を放りだして、ココに来ているだけでもアウトだわ。
それに彼女は取引先の重役の娘。仕事にだって響くはず――。
「嘘だったんだ」
「はぁ?!」
彼の言葉に思わず声を荒らげ、振り向いてしまった。
すると真幸は、チャンスとばかりに私の両腕を掴み力説し始める。