人間嫌いの小説家の嘘と本当
「彼女。俺がお前と結婚するって何処からか聞いたらしくて、俺の気持ちを引き止めようと妊娠したって嘘吐いたらしいんだ」
それにしたって二股していた事には変わりない。
彼女だって必死だったんだと思う。真幸が別の誰かと結婚するって聞いても、引き止めようとした。
それほどに貴方を愛しているって事じゃないの?
妊娠が嘘だったからって、あぁそうですかって元サヤに戻るほど、私はお人好しじゃない。
「ふざけ――」
「いい加減にしてくれないか」
怒りのまま叫ぼうとした瞬間、後から抱き竦めるように、長い腕が私を包み真幸の手から引き剥がした。
「部外者は黙っててくれ」
邪魔をした侑李を、キッと睨み付け低く唸る。
けれどそんな睨み方じゃ侑李には到底勝てっこない。
「部外者?コイツは俺のもんだ」
「ッ!」