人間嫌いの小説家の嘘と本当
サングラスを外した侑李の瞳を見た瞬間、真幸が息を飲んだのが分かった。
今ので完全に彼の負けだ。蛇に睨まれた蛙のごとく小刻みに震えはじめている。
「涼花」
侑李の口から今まで一度も呼ばれたことが無い、自分の名前が聞え顔を上げると、そのまま私の顎を掬い唇を奪う。
そして首元に顔を埋めると、チゥと小さな音と同時に痛みが走った。
「ちょっ――」
「なっ」
侑李の行動に、私も真幸もほぼ同時に驚きの声を上げる。
私を助けてくれようとしたのかも知れないけれど、こんなところでキスマーク付けるなんて有り得ない。
彼が付けた痕を手で抑え睨みつける。
けれど侑李は何食わぬ顔をして、私の額に唇を押し当てた。
ドクン……。
心臓が大きく跳ね、体中の熱が顔に集まってくる。
「何?もう一度、キスして欲しいの?」