人間嫌いの小説家の嘘と本当
私から離れていく彼の顔を、思わずジッと見つめていると、悪戯っ子のよう眼だけを細め薄く笑った。
「ば、バカじゃないの」
赤くなった顔を隠す様に、慌てて逸らし悪態を吐く。
ホント、心臓に悪い……。
しばらくは心臓が治まりそうにないな。
「涼花……お前――」
その様子を間近でみていた真幸が、二~三歩後ろに下がりながら、信じられないといった表情で私を見詰める。
別れた元カレに、今更なんて思われようが構わないけれど、照れた顔を見られるのは、さすがに恥ずかしい。
「とんだ尻軽オンナだったんだな。俺と別れて二ヶ月も経ってないのに……」
真幸の言葉に驚き、目を大きく見開く。
し、尻軽オンナ?!どの口が言ってんのよ。
二股して私を裏切ったのは、あんたでしょう?!
奥歯をグッと噛み締め、怒鳴り散らしたいのを我慢して、抑揚のない低い声で言い返した。