人間嫌いの小説家の嘘と本当
でも、これでようやく私の中で踏ん切りをつけることが出来る。
――さようなら、真幸。
「帰るぞ」
「うん」
先に歩き出した侑李の背中を追うように、一歩を踏み出した。
なんだか心の奥に引っ掛かっていたものが取れ、清々しい気分だ。
今なら、ほんの少しだけ素直になれそう。
「侑李」
隣を歩く侑李の横顔を見上げた。
暗がりでハッキリとは見えないけれど、色白で端正な顔立ちはココからでも分かる。
黙っていれば、かなりのイケメン。
いきなりキスマークを付けてきたり、人を雑用係みたいに扱ったり驚かされることばかりだけど、それにより助けられてきた。
出会った時も、今日も――。
今まで言えなかった言葉を、ちゃんと伝えたい。