人間嫌いの小説家の嘘と本当
慌てて顔を逸らしたのがいけなかったのか、不機嫌な声を漏らし、その言葉と共に首にまわされた腕の力が一層強くなる。
そして彼の顔が耳元まで近づいたかと思うと、フゥ~と息を吹きつけてきた。
「ヒャッ……ちょ、止めてってば」
彼の息がかかった左耳を抑えながら、真っ赤になった顔を向ける。
それを面白そうに、ニヤリと笑みを浮かべ「冗談だ。バカ」と首に回した腕を緩めた。
そんな彼に口をパクパクさせ、言い返せないでいると侑李は、喉を鳴らしながら可笑しそうに笑う。
はぁ~もう本当に、この人には敵わない。
半ば諦めながら、二人並んで家の門をくぐった。