人間嫌いの小説家の嘘と本当
そんな私に、追い討ちをかけるように空から冷たい雫がひとつ、またひとつと落ちてきた。
「……雨?」
涙でメイクも剥がれ落ち、ぐしゃぐしゃな私には関係ない。
むしろ、この雨に全てを洗い流して欲しいくらいだ。
建物の間から見える空に、顔をむける。
ポツリポツリと降ってくる雫が、髪を、顔を、全身を濡らしていく。
気持ちいい……。
雨がこんなに有難いって思ったことないかもしれない。
いっそ、このまま私の存在ごと消してくれないかな。
顔を上げたまま目を閉じて、しばらくの間雨に打たれていた。
どのくらいの時間が過ぎただろう。
周りが少しだけ明るくなったような気がして、閉じていた目をゆっくりと開く。
するといつの間にか雨は止み、雲の隙間から半分欠けた月が目に入った。
何を考えるでなく暫く月に見入る。
雨が降ったお陰か、いつもより空が澄んでいるような気がした。