人間嫌いの小説家の嘘と本当
綺麗……月を見上げるのなんていつぶりだろう。
ジャリ――。
暫くボーッと空を見上げていると、砂利を踏む音が近くに聞こえ、斜めに左下に顔を傾け音がした方に向けた。
「っ!!」
目に映った瞬間、息を飲んだ。
視線の先に見たもの。
それは月明かりに照らされた白銀に輝く髪を持つ二十代後半の男性。
目はサングラスをしていてよく見えないけれど、現世のものとは思えないほど、綺麗な顔をした人だ。
本当に人間?天使か、それとも私を迎えにきた死神?
あまりにも日本人離れした彼の容姿に、あらぬ考えが浮かぶ。
お互いの視線があい、見つめ合ったのはきっと数秒。
けれど次の瞬間、低く少しイラついた声が聞こえてきた。
「邪魔」