人間嫌いの小説家の嘘と本当
「くぅ……」
声無き声が痛みのあまり、口から漏れる。
顔を顰め、そのままなす術なく倒れ込んだ。
「ごほっ、ごほごほっ――っ」
最近まで使われていなかったと思われるソファは、少し動いただけでも埃が舞う。
「急に動かさない方が良いよ。結構強く殴ったみたいで、応急措置はしたけど血が出てたから」
咳き込んだことで、私が起きたことに気が付いたのか、背後から物腰の柔らかなそうな男性の声が聞こえた。
言葉自体は優しいのに何処と無く冷たい感じがして、信用出来ないと本能的に警鐘が鳴り響く。
「誰?」
意識と視線を後ろに集中し、相手の出方を見る。
特に敵意は感じないけど此処にいると言うことは、あの男の仲間の可能性が高い。
仮に黒幕だとすれば尚更気を抜くことは出来ない。
「あー、そんなに警戒しないで。僕は単なる執事だから」