人間嫌いの小説家の嘘と本当

天使とか死神とか、マンガや小説じゃあるまいし現実である訳が無い。
一瞬でも、可笑しな考えを起こしたことに自嘲的な笑みが浮かんだ。



「退くの、退かないの?」



ひとりで納得していると、少し呆れたように気の抜けた声が頭の上から降ってくる。



「あ、ごめんなさい。直ぐに退くから……」



立ち上がろうとするけれど長時間座っていたせいか足に力が入らず、よろめいてなかなか立てない。

尻餅を何度かつきつつ、壁伝いにようやく立ち上がると、私の横を擦り抜けるように、彼は何を言うこともなく通り過ぎて行く。


なによ、ちょっとは心配してくれていもいいじゃない。
心の中で文句を呟きながら、壁に背を預けて再び座り込んだ。

けれど改めて自分の姿をみて納得。
髪も服も雨でビショビショに濡れ、過呼吸起こしていたから左手にはビニール袋が握られている。

何を言わず警察を呼ばれていても可笑しくない状況だ。
声を掛けてくれただけでも、感謝しなければいけない。


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