人間嫌いの小説家の嘘と本当

はぁ、これからどうしよう。

家族になるはずだった人には裏切られ、そして天職と思っていた仕事も辞めてしまった。
その上、家と呼べる場所は真幸と住んでたマンションだけだし、幼い頃に両親とは死別していて、実家もない。

ふふっ。私って、つくづく運のない女。
一時、幸せだと感じることはあった。
けれど、それも直ぐに手から零れ落ちるように留まってくれない。

真幸と出会ったこともそうだ。幸せになれる、そう思った瞬間これだ。
私って、幸せに嫌われてるんだろうか。
深い溜息を一つ吐くと、身体を壁に預け静かに目を閉じた。



「なぁ、お前」



声に反応に目を開くと、店に入った筈の男が何故か入り口で立ち止まり、コッチを見ていた。
一瞬、他の誰かに声を掛けたのかと、周りを見たけれど誰もいない。
どうやら私に声を掛けているようだ。

まだ何かあるのか。それとも、みすぼらしい私を笑いたいのか。
何とでも言いなさないよ。
今の私には何もないし、きっと何でも受け入れらるわ。



「なに?」


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