人間嫌いの小説家の嘘と本当
何を話し込んでいるんだろう。
部屋全体が防音効果を施してあるのか、余り外部の音が聞えない。
けれど少しでも聞こえないか、耳を澄まし彼らの声に集中した。
暫くして男がエンジンを切り一歩前へ踏み出す。
「――は無事なん……な」
所々途切れてしまい、内容までは分からないが声が聞える。
静かで落ち着いているけれど、何処か怒りを含んでいるように聞こえる男の声。
この声……嘘っ、侑李?!
驚きで叫びそうになるのを、慌てて両手で口を覆い、その場にしゃがみこんだ。
もしかして私のために、来てくれたの?
自分が狙われてるって分かってるはずなのに……。
締め切りのコラムもあるのに、仕事より私を優先にしてくれた?!
あー、どうしよう。めちゃくちゃ、嬉しい。
「あなた次第……言って……か」
私が感動に浸っていると、物腰の柔らかな声が響く。