人間嫌いの小説家の嘘と本当

「もう!何で開かないのよっ」



苛立ちをぶつける様に、ドアを蹴飛ばす。
けれど、ドンと鈍い音はするものの微動だにしない。

蹴飛ばした反動が自分に返って来て涙が滲む。
痛ぁ~い。見た目によらず、頑丈なドアね。

そうこうするうちに、下から男たちの叫び声が聞こえ始めた。

……っ、嘘。始まった?!

慌てて窓に駆け戻り、下の様子を覗き見る。
どちらから始めたのかは分からないけれど砂埃の中で、侑李を中心に争い始めているのが見えた。

彼はなんとか応戦しているようだけど、彼の体力を考えると長くは持たない筈だ。

執事はというと、高みからの見物といったところか。
一歩引いた位置に立ち、隙を狙っているようにも見える彼の背中には余裕すら感じられた。

もう、どこまでもいけ好かないヤツね。

その時、視界の端でキラッと光るものが写った。
なに今の――。

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