人間嫌いの小説家の嘘と本当

上体を捻って力を腰に乗せるように、体を回転させながら渾身の力を込めて回し蹴りをした。

窓はヒビが入っていた事もあり、更に衝撃が加わり弾き割れる。
そしてドアも蝶番が外れたのか、歪みが生じ軋む音を立てながら開いた。

床に落ちたガラスを気にする暇なく、部屋から飛び出し下の様子を見渡す。

月明かりがあるとはいえ暗い上に、何人ものの男たちが争い合っているせいで、砂ぼこりが舞い視界を遮り見えた筈の彼の姿が見つけられない。



「侑李!!」



声を張り上げて、私の存在を知らせる。
どうか無事でいて――。

一瞬彼らの動きが止まり、私の方に視線が集まる。
動きが止まったおかげで土埃が少しだけ収まり、白銀の髪が月明かりに光り、侑李と目があった気がした。



「蒼井?」



小さな声だったけれど、確かに彼の声が聞えた。
侑李に言葉を掛けようと口を開いた瞬間、男の声が遮るように響き渡る。



「彼女に構うな。奴を捕まえるのが先だ!」

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