人間嫌いの小説家の嘘と本当

目を細め、気だるげに彼を見上げる。



「男にでも振られたのか?」

「なん――」



彼の言葉に目を見張った。
……今、なんて言った?直球にも程があるでしょ。
というか、そもそも何で男に振られたって分かったの?



「それ退職祝いの花束だろ?泥まみれだけどメッセージカードも見えた」



私の言いたいことが、まるで聞えたかのように、表情を変えることなく、少し離れた場所に散乱している、花束やプレゼントの品々を、外したサングラスで指し示した。

そういう事かと納得し一気に力が抜ける。
もしかして、これに気が付いて同情したとか?



「だとしたら、なに?」



なんとなく気に食わなくて、言い方が刺々しくなる。

花束とメッセージカードだけで、よくもまぁ男に振られたって発想したんだ。
想像力豊かと言うべきか……鋭いと言えばいいのか。
男に振られた哀れな女に、次は何を言うんだろう。

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