人間嫌いの小説家の嘘と本当
執事の声だ。その声により止んでいた乱闘が再開された。
「くっ、あの腹黒執事」
怒りを閉じ込めるようにグッと両手を握り締め睨み付ける。
でも侑李の姿は確認できた。それだけでも良かった。
彼はまだ、倒れてはいない。
なら今私がしなければいけないコトは――アイツだ。
私は一階の離れた場所から侑李を狙う人物へと視線を移す。
そいつも私が部屋から飛び出した時は、驚いた顔を浮かべていた。
けれど今は、そこからじゃないも出来ないだろと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべ、改めて侑李を標的に銃を構え直している。
視力2.0をバカにするんじゃないわよ。
その頬の傷、バッチリ見えてるんだから。
あんただけは、絶対に許さない!!
階段を降りて、あそこにたどり着いても間に合わない。
例え侑李にここから危険を知らせても、今の彼にはどうにも出来ないだろう。
階段脇の鉄製の錆びた手すりに両手を置き、身を乗り出して下を見下ろす。
ここから一階までは、裕に五メートルはある。
飛び降りたとして、死なないまでも捻挫程度では済まないはず。
どうする?何か方法はないの?
辺りを見回して、ある一点に視線が止まった。