人間嫌いの小説家の嘘と本当
どくどくと手が心臓になったように波打つ感覚がする中、ギュッと閉じていた目を開け、手元を見上げる。
止まった――。
ホッと胸を撫で下ろした瞬間、後方からギギギギと軋む音が聞え、その後ガッシャーンと大きな音が響き渡る。
思わずビクッと全身が震え、恐る恐るそちらに目をやると、さっきまで足を掛けていた手摺りが、無残な形で落ちているのが見えた。
もう少し遅ければ……侑李が私を呼んでいなければ、私もアレと同じ運命だったって事か。
思わず身震いがした。
「蒼井!無事か?!」
私がチェーン目掛けて飛んだ事と、手摺りが落ちたことにより、男たちの手が止まり視線が私に集中していた。
「……な、なんとか」
男たちの凝視ぶりに、驚いてしまい声が小さくなる。
「馬鹿か、お前は!俺が誰のためにココに来たと思ってんだ」