人間嫌いの小説家の嘘と本当

「うっ……ゴホ、ゴホゴホ……」



埃に包まれむせながら、私は薄く目を開け視線を動かす。
……生きてる?頬に傷がある男は?侑李は?


そんなことを思いながら、腕を動かしてみる。
くっ、あちこち痛い……もしかして、あばら骨何本か折れたかも――。

そう思えるくらい、何処がと言えないくらい体中が痛いし、息を吸おうとすると胸が苦しい。

行かなきゃ、侑李のところへ。
侑李への想いが軋む体を突き動かし、体の上に圧し掛かる段ボールから這い出す様に抜け出し、壁伝いに立ち上がる。

埃が舞い視界と空気が悪い中、左腕で口元を覆い倒したはずの頬に傷にある男の姿を探す。
すると少し離れた場所にビクともせず倒れている男の姿を見つけた。

壁伝いに近づくと、男は口から泡を吹き気絶している。
この様子じゃ、暫く起き上がらないだろう。
後頭部を殴ったお返しよ。暫く大人しくしてなさい。

足元に転がっていたライフル銃を拾うと、それを支えに歩き出す。
左足首を捻っているのか、それとも折れてるのか、さっきから足に力が入らない。

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