人間嫌いの小説家の嘘と本当
「別に」
はぁ?!何もないなら、声掛けないでよ。
もう、一人にして欲しい。変に疲れたわ。
「……っくしゅん」
長く雨に打たれていた所為だろう。
服が体に張り付き気持ち悪いし、体全体が冷えていて寒さを感じる。
小刻みに震える体を、両手で抱きしめ少しでも暖を取ろうとした。
「……その場所でずっと居るくらいなら、酒飲まない?」
もう何なのよ……って、酒?もしかして私、誘われてる?
まぁ、お酒なら体も温まるかもしれないし、嫌なことを忘れるには、うってつけなのか知れない。
いやいやいや。私こんな格好だし、お店に入って大丈夫なの?
「行くぞ」
私が自問自答しているうちに、何も答えないのを「yes」と判断したのか、彼は店のドアを開け入ってしまった。