人間嫌いの小説家の嘘と本当
ゆっくりと視線を向かいの鏡に走らせる。
裸の私を後ろで抱きしめるように抱える侑李。
彼もまた服を一切身に纏っていない。
「えー?!何で裸なの?!」
「いちいち煩い奴だなぁ。風呂に入ってるんだから、当たり前だろ」
当然だと言わんばかりに、平然とのたまう侑李。
違う違う違う。私が言いたいことは、そうじゃなくて――。
「どうして、二人でお風呂に入っているのかって言うことよ」
「ったく……埃まみれで泥だらけの汚物を、ベットにそのまま寝させるわけに行かねーだろうが」
さも面倒くさいといった表情で、耳の穴を指で掻きながら答える。
今、私のことを汚物と、おっしゃいましたよね、このオ・ト・コ。
私の聞き間違いじゃないですよね?
「こんの、最低男ぉー!出ていって!!」
思い切り両手で、侑李の体を押し抵抗する。
けれど違和感に両手を見ると、包帯でぐるぐる巻きにされた挙句、水に濡れないようにかビニール袋で覆われていた。