人間嫌いの小説家の嘘と本当

「それで?一人で入るのか、入らないのか。どっちだ?」



バスタブに肩肘を乗せ、頭を支えながら冷たい視線で見下ろす。

これは観念せざるを得ない。
こんな状態で、まともにお風呂に入るなんて出来る訳がない。



「……いじわる」



そう言うしかなかった。

あぁ、もう恥ずかしい。昔の男に迫られ誘拐されるわ
、主人である侑李に助けに来てもらうわ、挙句の果てに手当までされた後、裸でお風呂にまで付き合ってもらうなんて、穴があったら入って籠りたい。



「じゃ、体洗うからコッチに来い」

「ちょっ、どこ触って……やんっ」



背後から脇の下を通って回した腕が、私の胸に触れる。

その拍子に彼の親指が胸の頂を弾き、自分でも思ってもみない変な声が出た。



「エロい声」


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