人間嫌いの小説家の嘘と本当
楽しそうにクスクス笑う声が耳元を掠め、恥ずかしくて血が逆流するかの様に顔に熱が集中する。
「バカ変態、ドスケベ、エロおやじ!嫌っ、もう離れて‼」
手をバタバタと動かし、侑李との距離を取ろうとする。
けれどその手は侑李にあたる事なく、別の物に当たった。
「あ、バカ!」
そんな声が聞えたと思ったが、すでに遅し。
キュッと音と共に、溢れ出すお湯が頭上から降り注ぐ。
その瞬間全身に雷が落ちたような激痛が走り、目の前が真っ白になる。
「っ、ぎゃぁぁぁ!!!!」
「蒼井、落ち着け。今、止めるから」
暴れる私を抑えつつ、シャワーの栓を戻す。
私は何が起きたのかも把握できなくて、ただ体中が心臓になったように、ドクドク鳴り響くのを治まるまで、その場から動く事が出来なかった。
「大丈夫か?」