人間嫌いの小説家の嘘と本当
狭い店内だけに、探さなくても彼の居る場所が分かる。
彼はカウンターの一番奥に座り、チラリ視線だけを私に向けて小さく手を招いた。
どうやら彼は、このお店の常連のようで、親し気にマスターに話しかけ、タオルを要求する。
「あれ?侑李の知り合い?珍しい事もあるんだね」
ユウリ……この人の名前かな。見た目に反して日本人なのかな。
右側は、編み込みをして耳を出しているのに、左側は何もせずに流した、アシメントリーな髪型。
色も真っ白だし、羨ましいくらい色白な彼。
さっきはサングラスを掛けていて見えなかったけど、瞳はお店のライトのせいか金色に輝き、人とは思えないくらい綺麗な顔してる。
「知り合いって訳じゃない。さっき、そこで拾った」
表情を変えずに、手元のグラスを口に運んで液体を喉に流し込んだ。
艶っぽい仕草に、思わず魅入ってしまう。