人間嫌いの小説家の嘘と本当
「はい、これでお終いです……よくこの程度の傷で済んだものですね。ご無事に帰られて、ようございました」
最後に手の包帯を交換した櫻井さんが、安堵の笑みを浮かべて立ち上がる。
手際よく処置してくれたおかげで、痛みを感じる時間も短くて済んだ。
頭にはカーゼがズレない様にネットが被され、まるで重症患者のよう。
両手も包帯でぐるぐる巻きだし、足首は捻挫しているらしく念のため固定されている。
あれ?みたいじゃなく、重症なのかも?
今更ながらに無茶をしたなと反省する。
でも後悔はしてない。
あの場での行動があったからこそ、二人ともココに帰ってこられたのだと思うから。
「櫻井さんって、医療経験あるんですか?」
背を向け、包帯やハサミなどのを救急箱に仕舞う櫻井さんに声を掛ける。
だって彼の手当ては素早く完璧だった。
私自身よく幼い頃に怪我をしていたから、行きつけの診療所で、処置を受けたことは何度もあるけれど、本物に引けを取らないくらい
否、それ以上に手慣れていると感じる。
「ございません。ですが、看護師の資格は持っております。侑李様に何かあった後では遅いですから」