人間嫌いの小説家の嘘と本当

興味が無さそうな彼に対し、マスターは「へ〜、侑李がねぇ」と興味津々の目で私を上から下まで視線を上下させた。

なんだか品定めされているみたいで、緊張しちゃうな。
胸に抱いた紙袋に力が入り、グシャと音がする。



「良く見れば、びしょ濡れじゃないか。ちょっと待っててね」



そう言うと、マスターは奥のStaffOnlyと書かれた扉の奥に消えていく。

そんな彼の背中に「さっきから、そう言ってるのに……」と呟くように小さく言って、また一口液体を含んだ。

どうすべきか少し迷ったけれど、居心地の悪さを感じてグラスを口に運ぶ白髪の彼に近づき、声を掛けることにした。



「あの……」

「見すぎ」



グラスをコースターの上に置き、深く息を吐いてから色気たっぷりに流し目で私をみた。



「え?」

「俺のこと、見てただろ?……まぁ、慣れてるけど」


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