人間嫌いの小説家の嘘と本当
さすが、執事の中の執事。
料理もプロ並みだし、侑李のためなら何でもしそうだな。
「しかし医師免許は持っておりませんから、あなたが眠っている間に、お医者様に診ていただきました」
その診断によると、頭部の打撲と足首の捻挫。
加えて肋骨二本のひび割れに掌の擦過傷など、後頭部は五針縫ってはいるものの、諸々で全治三ヶ月らしい。
思っていたより軽症だ。
飛び降りた時は呼吸するもの苦しくて、絶対折れてるって思っていたから、なんだか拍子抜けしてしまう。
「それでは、私は侑李様を診に行きますから、安静になさっていてくださいね」
その言葉にバスルームで見た侑李の傷を思い出す。
真っ白な身体に、いくつもの打撲痕や擦り傷。
普段何か症状が出るって訳じゃないから忘れがちだけど、彼はアルビノだ。
少しの切り傷であっても、彼には命に関わることになるかもしれない。
急に不安が押し寄せ、櫻井さんを呼び止めた。
「侑李の具合はどうなの?」