人間嫌いの小説家の嘘と本当

さすが、執事の中の執事。
料理もプロ並みだし、侑李のためなら何でもしそうだな。



「しかし医師免許は持っておりませんから、あなたが眠っている間に、お医者様に診ていただきました」



その診断によると、頭部の打撲と足首の捻挫。

加えて肋骨二本のひび割れに掌の擦過傷など、後頭部は五針縫ってはいるものの、諸々で全治三ヶ月らしい。

思っていたより軽症だ。

飛び降りた時は呼吸するもの苦しくて、絶対折れてるって思っていたから、なんだか拍子抜けしてしまう。



「それでは、私は侑李様を診に行きますから、安静になさっていてくださいね」



その言葉にバスルームで見た侑李の傷を思い出す。

真っ白な身体に、いくつもの打撲痕や擦り傷。
普段何か症状が出るって訳じゃないから忘れがちだけど、彼はアルビノだ。
少しの切り傷であっても、彼には命に関わることになるかもしれない。

急に不安が押し寄せ、櫻井さんを呼び止めた。



「侑李の具合はどうなの?」


< 210 / 323 >

この作品をシェア

pagetop