人間嫌いの小説家の嘘と本当

十歳を過ぎた頃からは、侑李自身が気を付けるようになり、紫外線の強い昼間は極力避け、外出する時は陽が落ちた夜を選んでいたという。

大人になった今は、大分耐性が出来たのか余程紫外線の強い日以外は、サングラスを掛ければ外出も出来るようになったらしい。

けれど念のため、一年を通して長袖を着て生活しているようだ。

年を重ねコツを掴んだのか、今までは熱を出すことも無く、櫻井さんも安心していたのだとか。

また小説家という職業は侑李の体に合った天職ともいえる。
殆ど外に出ることは無く、パソコンやメールを使って仕事が出来るのだから。



「ですが、あなたのトレーニングメニューはかなり侑李様の体に負担を掛けていたようです」



櫻井さんの言葉に息を飲む。
嘘でしょ……そんな。侑李の為を思って作ったメニューが、彼にとっては負担でしか無かったの?



「でも、あれは櫻井さんにも相談して無理が無い範囲でって――」



そうだ。私一人で決めたメニューじゃない。
ジョギングだって、陽が昇らない早朝か夜中を選んでしてきた。
なのにどうして――。


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