人間嫌いの小説家の嘘と本当

「あなたが不思議がるのも無理はありません」



肯定を示す言葉を吐く。
意味が分からなくて首を傾げていると、怒りを含んだ声が聞えてきた。



「あなたと私が決めたメニューだけなら問題なかったのです。ですが、あの侑李様のことです。私たちに隠れてトレーニングしていたんです」

「っ、嘘?!」



でも確かに……そうでもしなきゃ、あんな大勢と対等にやり合うなんて、この短期間に出来るはずがない。

それに体つきだって……かなり引き締まっていたし――。
バスローブから垣間見えた腹筋を思い出し、顔が熱くなる。



「蒼井様。また、だらしなく顔が緩んでますよ」

「わっ、ごめんなさい」



慌てて両頬を叩く。
そんな私を見て櫻井さんは、呆れたように溜息を吐いた。


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