人間嫌いの小説家の嘘と本当
最終章

彼が嘘をつく理由


そして翌日。
私と侑李は、二人して熱を出した。

私のは頭部の傷口が原因で、翌日には下がり起き上がれる程に回復。
けれど侑李は、三日経った今も熱が下がらない。

私は櫻井さんに無理を言って、看病を申し出たけれど、両手に包帯を巻いているせいで、タオルを絞ることも着替えをさせることもままならず役立たずだ。

ただ傍にいる事しか出来ないのが、もどかしい。
変わってあげられたらなぁ。

侑李の額に浮かぶ汗を拭きながら、ふと思う。
櫻井さんから聞いた幼い頃の侑李の話。
殆ど誰も来ない別宅。いつも彼は独りだったんだろうか?

ご両親はどうしてたんだろう――。

櫻井さんからも、侑李のご両親の事については詳しく聞いたことが無い。
ただ、幼い頃から櫻井さんは彼の傍に仕えていたということ、それだけしか私は知らない。

本当に私、侑李のこと何にも知らないんだな。



「……んっ」


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