人間嫌いの小説家の嘘と本当
視線を戻し薄く笑みを浮かべると、頬杖をつきグラスを傾け遊び始めてしまった。
慣れてるって、どういう意味?
どうして、そんな風に哀しそうに笑うんだろう。
幾つもの疑問が浮かぶけれど、聞いてはいけないような気がして口を閉ざす。
「座れば?」
「いや、濡れちゃうし」
髪からも、服からも雫が絶え間なく滴り落ちている。
こんな状態で椅子に座ったら、確実にマスターに迷惑がかかってしまう。
「そう……じゃ、飲む?」
興味なさげに返事、次は今まで彼が口に付けていたグラスを差し出してきた。
何が“じゃ”なのか分からないけれど、これ何だろう。
「飲まないの?」
飲まないと思ったのか、引きそうになった彼の手を掴んでグラスを受け取った。
その中には、ライムだろうか。爽やかな香りが漂う透明な液体が入っている。