人間嫌いの小説家の嘘と本当

六歳の夏。
ちょうど、今のように暑い八月のある日。
突然、私はひとりになった。

親戚の人からは、交通事故だったと聞かされている。

私も両親と同じ車に乗っていたけれど、私だけが奇跡的に生き残り、二人は帰らぬ人となってしまった。
事故のショックか、私の記憶には事故の前後の記憶がすっぽり抜け落ちたように無い。

どこに行っていたのか、何をしていたのかも思い出せない。
私の手元に残っているのは、たった一枚の写真のみ。

その写真も、今は手元にはない。

真幸の部屋に私の荷物と一緒に置いたままだ。
もう処分されてしまったかもしれないな。



「お父さん、お母さん……」



ソファに背を預け、天井を仰ぎ見る。

心細いせいか、亡き両親を思い出した。
私の心の中にしか居ない彼ら。今では顔も朧げだ。

真幸に連絡取ってみようかな。
写真だけでも残っていて欲しい。


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