人間嫌いの小説家の嘘と本当
あまりお酒の種類について知らないだけに、これが何のお酒か分からない。
この人には、いろいろ聞きたいことがあるけれど、泣き喚いていた所為か喉がカラカラ。
ちょうど何か飲みたいと思っていたところだし、そこまで強いお酒じゃないでしょ。
「いただきます」
特に疑うことなく、グラスの中に残っていたお酒を一気に口に含む。
「乾いたタオルがあんまり無いんだけど……って、え?その酒飲んじゃったの?」
ゴクリとお酒を喉に流し込んだのと、数枚のタオルを手にマスターがドアを開け戻ってきたのが、ほぼ同時だった。
「あ、はい。おいし――っあ……」
爽やかな柑橘系の香りの後に、液体が通った場所から急激に熱を発していく。
普段お酒は軽めのものしか飲まない私にとって、こんな経験は初めてで、一瞬パニック状態に陥り、聞くどころでは無くなった。