人間嫌いの小説家の嘘と本当

侑李の過去――。

もしかしたら人間嫌いになった理由は、命を狙われた以外にもあるのかもしれない。
蓮見さんの言葉や表情から、そう感じる。



「そう。容姿が家族と違うせいか、周りに迷惑がかからないように。気持ちが顔に出ないように、ね」



もしかして元々人間嫌いという訳じゃなく、自分と関わることで迷惑が掛からない様に、人を寄せつけずにいたってこと?

それって家族はどう思っていたの?もしかして家族も――。



「あの……侑李の家族は――」



そこに続く言葉は、すぐそこまで浮かんでいるものの喉から出てこなかった。

「彼を嫌っていたの?」なんて言っていいのか分からない。
繊細な話だけに、今の私がそこまで踏み込んでいいのか躊躇してしまう。



「確か、彼が十一歳の夏の終わり頃から特に顕著になってね。何があったのか心配して聞いても、彼は何でもないの一点張りで取りつく島も無かったよ」



夏の終わりか……何があったんだろう。

侑李が十一歳っていうことは、丁度私が六歳になったあたりだな。
私が両親と交通事故に遭った時期だ――。

自分と重なって、勝手に心が沈む。


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