人間嫌いの小説家の嘘と本当

「コラ、ヤブ医者。くだらないこと喋ってんじゃねぇーよ」



いつの間にか、部屋の入り口に腕組みをした侑李が、柱に背中を預け立っていた。
なんか、機嫌悪い?



「侑李様。一緒にお茶を飲まれますか?」



丁度、櫻井さんがトレイにお茶を乗せ帰ってきて、入り口で侑李に声を掛ける。



「いや、まだ仕事が残ってる」



不機嫌にそう言い放つと、つかつかと私の前に歩み寄り、不意に腕を掴んで引っ張り上げた。



「もう診察は終わったんだろ?コイツ、貰っていくからな」



そう言うが早いか、侑李は私の膝裏に腕を伸ばし、お姫様抱っこをする。



「ひゃっ。ゆ、侑李?」


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