人間嫌いの小説家の嘘と本当
慌てて彼の首に捕まり、訳が分からず蓮見先生と侑李の顔を何度も行き来してしまう。
仏頂面の侑李とニコニコ微笑む蓮見先生。
悪魔と天使のようなこの光景は一体何?
目を瞬かせ戸惑っていると、侑李は何も言わないままドアの方へ歩き出した。
「せ、先生」
「いいよ。でも、無理はしないようにね」
ニコニコと嫌な顔せず手を振る蓮見先生。
私はペコリと小さく頭を下げ、真横にある侑李に視線を移す。
蓮見先生の「ほんと人間らしくなったよねぇ」と嬉しそうに笑う声が、背後から聞こえるが侑李は聞こえないフリを決め込んでいるのか、無表情のまま前を向いて歩みを止める気は無いらしい。
「ちょっと、侑李。いくらなんでも、あの態度は先生に失礼なんじゃ――」
「煩い」
久々に聞いた。侑李の一喝拒否発言。
「お前は俺の目の届くところに居ればいいんだ」
私を仕事部屋のソファに下ろし、自分はパソコンの前に座って仕事を始めてしまう。