人間嫌いの小説家の嘘と本当
「……蒼井。俺の家族の事、気になるか?」
侑李は、私の考えを読み取ったように口にする。
真っ直ぐに私を見詰める淡青色の瞳。
ここで嘘をついても、今の彼には見抜かれてしまう。
そんな気がして、私は本心を言葉にした。
「まぁ、気にならないって言ったら嘘になる。私には両親は居ないから、尚更どんな人なんだろうって考えちゃうかな」
正直そういうと、私の答えに納得したのか、侑李はふっと目元を和らげ薄く笑みを浮かべる。
「そうだよな……悪いが、もう少し俺に時間をくれるか?時期が来たら、ちゃんと話すから」
「うん。待ってる」
侑李の三十一年間。
例え恋人であろうと、そうそう簡単に話せる内容じゃないのかもしれない。
ただでさえ命を狙われ、櫻井さんと二人だけで闘ってきたんだから。
侑李が話せる時が来るまで彼に寄り添い、いつまでも待っていよう。