人間嫌いの小説家の嘘と本当

中に入っていた手紙を広げると、綺麗な真幸の字が綴ってあった。



――蒼井涼花様

この間は、酷いことをして申し訳なかった。
許して貰えるとは思わない。ただ、あの時謝っていなかったことこの場を借りて謝らせてほしい。

本当に、申し訳なかった。

荷物を整理していたら、涼花の服や大切にしていた写真が出てきたから送ります。

俺、涼花と居られて幸せだった。五年間、本当にありがとう。
白鳳侑李さんと幸せにな。        

追伸、式場はこちらでキャンセルの手配をしたから安心してくれ。


                            黒河真幸――



風の噂で彼は今、前の会社を辞め小さな商社に勤めていると聞いていた。
一から仕事を覚えるのは大変だと思うけど、彼もまた新しい道に進もうとしているに違いない。

頑張ってほしいな。それでいつか幸せな結婚をしてもらいたいと願う。
こんなことを考えていたら、また侑李に“甘い”って怒られちゃうかな。



「なに、手紙見てニヤけてんの?気持ち悪い」

「わっ!」



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