人間嫌いの小説家の嘘と本当
「何かあったら絶対呼んでね」
真新しいスマホを掲げ、彼の淡青色の瞳を見つめる。
前のものは木崎さんに踏み潰されてしまったので、先週ようやく侑李に頼んで手に入れた最新機種だ。
いつでも駆けつけるって意味で言ったつもりだけど、分かっているのかいないのか、ふっと笑みを浮かべ軽く私の頭を撫でる。
「ああ。じゃぁな」
そう言って背を向け歩き出した彼の背中を見送りながら、写真が手元に戻ったことで舞い上がっていた私は、鼻歌を歌いながら届いた荷物を整理し始めた。
その日、侑李が帰ってたのは陽が沈み星が輝き始める頃。
こんなに長い時間家を空けたのは、私が来てから初めてで何かあったんじゃないかとスマホを握りしめ、彼からの連絡を、不安と葛藤しながら待っていた。
けれど侑李は何事もなかったかのように帰って来て、言葉少なめに私にシュークリームの入った袋を渡すと、そのまま自室に篭ってしまう。